デュタステリドとフィナステリドの違い
作用・副作用・選び方
AGA(男性型脱毛症)の内服治療で使われる薬は、大きくデュタステリド(先発品: ザガーロ)とフィナステリド(先発品: プロペシア)の2種類です。どちらも「AGAの進行に関わる物質を減らす」という点では同じ方向の薬ですが、作用する範囲が違います。この記事では、その違いと選び方の考え方を整理します。
1. そもそもAGAはなぜ進行するのか
AGAの進行にはDHT(ジヒドロテストステロン)という物質が関わっているとされています。男性ホルモンであるテストステロンが、5α還元酵素という酵素の働きでDHTに変換され、このDHTが毛根に作用することで、髪が太く成長しきる前に抜けるサイクルが繰り返されると考えられています。
デュタステリドもフィナステリドも、この5α還元酵素の働きを妨げてDHTが作られるのを抑える薬です。生えている髪を増やすというより、抜けていく進行を抑えることを目的とした薬という理解が正確です。
2. 違いは「阻害する酵素の範囲」
5α還元酵素にはI型とII型があり、体内での分布が異なります。II型は毛乳頭や前立腺に多く、I型は皮脂腺などに広く分布しているとされています。
- フィナステリド ― 主にII型を阻害します。
- デュタステリド ― I型とII型の両方を阻害します。
そのためDHTの産生を抑える範囲は、デュタステリドの方が広いとされています。臨床試験でも、デュタステリドの方が毛髪数の増加が大きかったとする報告があります。ただし効果の感じ方には個人差があり、誰にでも同じ結果が出るものではありません。また、作用が広いぶん副作用の可能性も考慮する必要があります。
3. 比較表
| デュタステリド | フィナステリド | |
|---|---|---|
| 代表的な先発品 | ザガーロ | プロペシア |
| 阻害する酵素 | 5α還元酵素 I型・II型 | 主に5α還元酵素 II型 |
| DHTを抑える範囲 | 広い | II型が中心 |
| 1日の服用 | 1回1カプセル | 1回1錠 |
| 目的 | AGAの進行抑制(飲み続けている間に効果が期待される) | |
| 効果判定の目安 | 一般に数ヶ月以上の継続が必要とされます | |
| 中止後の献血制限 | 中止後6か月 | 中止後1か月 |
| 女性・小児 | 服用できません | |
4. 副作用と注意点
報告されている副作用の種類は両者で近く、次のようなものが挙げられています。
- 性欲減退
- 勃起機能不全(ED)
- 射精障害
- 肝機能障害
- 乳房障害(乳房の痛み、肥大など)
頻度や感じ方には個人差があります。気になる症状が出た場合は、自己判断で続けずに医師にご相談ください。
献血の制限
服用中は献血できません。また中止後も、デュタステリドは6か月、フィナステリドは1か月は献血を控えることとされています。輸血を通じて妊娠中の女性に成分が渡るのを防ぐためです。
PSA値への影響
どちらの薬も、前立腺がんの検査に使われるPSA値を低下させることが知られています。健康診断や泌尿器科の受診でPSA検査を受ける際は、服用していることを必ず医師に伝えてください。伝えないと検査結果の解釈を誤るおそれがあります。
5. どちらを選ぶかの考え方
一般的には次のような整理になりますが、最終的な判断は診察のうえ医師が行います。
- デュタステリドが検討されるケース ― 進行抑制の作用範囲の広さを重視したい場合。フィナステリドを一定期間続けたが変化を感じにくかった場合。
- フィナステリドが検討されるケース ― まず標準的な選択肢から始めたい場合。副作用が心配で、作用の範囲を絞りたい場合。
なお、両者は通常併用しません。作用する仕組みが重複するためです。
※当院で取り扱っているのはデュタステリド製剤です。フィナステリドをご希望の場合や、診察の結果そちらが適していると判断された場合は、その旨をご案内します。
6. よくある質問
Q. 効果はどのくらいで出ますか?
A. AGA治療薬は進行を抑える薬で、変化を判断するには一般に数ヶ月以上かかるとされています。1〜2か月で判断せず、医師と相談しながら続けることが前提の治療です。
Q. やめたらどうなりますか?
A. 服用を中止すると、抑えられていた進行が再び進んでいきます。維持のためには継続が必要な薬です。
Q. 初期脱毛はありますか?
A. 服用開始からしばらくの間、一時的に抜け毛が増えたように感じることがあります。ヘアサイクルが切り替わる過程で起こるとされるもので、多くは一時的です。不安な場合は医師にご相談ください。
Q. ジェネリックでも同じですか?
A. 有効成分と含有量は同じです。ただしデュタステリドのジェネリックには、AGAの効能で承認された「ZA」と、前立腺肥大症の効能で承認された「AV」があり、後者をAGA目的で使うと適応外使用になります。詳しくはZAとAVの違いをご覧ください。